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生きる喜びの実体化

この作品は認知症高齢者の女性が描いた絵を実体化する。参加者は、この作品に自由に落書きすることができる。

 原画は91歳認知症高齢者の女性が描いたもの。彼女はもともと画家として活躍し、抽象的な表現を追求していた。認知症になっても時々デッサン、ドローイング、落書きを描いている。



 認知症の方は最近の記憶を保つことは困難だが、昔の記憶は保持されている。彼女も最近描いた絵をよく忘れており、もちろん絵を描いた意図も覚えていない。だが、昔から絵の練習という習慣は保持したままである。絵画作品として認められない、また本人も意図を忘れた落書きの価値は何だろう。

 それは、「生きる喜び」を伝えることができることである。



 老人ホームで介護をしている私はいつも施設の利用者の死に直面し、その無力感と喪失感に苛まれている。しかし、彼女の“描く”という行為から人間の本能を思い浮かべ、私はその無力感の気持ちを乗り越え、やりがいを見つけた。


 この作品を通して、外出を禁止され外界と断絶された認知症高齢者の「生きる喜び」をリアルに実体化することは、展示を通して、きっと社会と接するきっかけになると考える。この展示は、彼女の「生きる喜び」を多くの人と共有するための試みである。


 この展示では、一週間にたくさんの来場者と一緒に展示する藝大生から落書きを書いてもらった。また、一つ面白い状況を見つけた。時々、ある人が落書きをした後、後から来た人が前の人のした落書きに手を加え、何かを創作する。多種多様な人はこの作品で自然に“表現を混じり合う”と見られる。そして、都内の公園でもやってみた。




制作:

ケケ

MON(女子美術大学アートプロデュース修士)

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